相続とは ー 対象となる財産と相続人の範囲、遺言の有無による違いなどを解説

相続とは ー 対象となる財産と相続人の範囲、遺言の有無による違いなどを解説

まず相続の定義や相続はいつから始まるのか、などの基本的な概要を説明します。

1. 相続とは?

相続とは、『財産上の権利義務を承継すること』です。

相続では、亡くなった人を被相続人、財産を受け継ぐ人を相続人といいます。相続とは、ある人が死亡した場合に、その亡くなった人が保有していたすべての財産や権利・義務を、配偶者や子どもなど一定の身分関係にある人が受け継ぐことを指します。

つまり簡単に説明すると、被相続人から相続人に財産上の権利義務を承継することです。

1-1. 相続の開始はいつ?

民法882条の相続の開始について、「相続は死亡によって開始する」と定めてあります。つまり被相続人が死亡した時点で相続は開始します。

なお、死には自然的な死だけでなく、行方不明になって7年が経過した場合などの「失踪宣告」や、事故や災害などで亡くなった可能性が極めて高い場合の「認定死亡」などの法律上の死亡を含みます。

1-2. 遺産分割について

遺産分割には3つの基本的なルールがあります。

  • 遺言書による指定
  • 遺産分割協議による遺産分割
  • 遺産分割調停

以上の3つになります。

相続においては、被相続人の遺した遺言書による指定が最優先されます。遺言書がない場合、あるいは遺言書による指定のない財産については、相続人同士の遺産分割協議により分割することとなっています。もし、その協議がまとまらない場合には、裁判所で遺産分割の調停を行うことになります。

1-3. 相続は揉める・・・!!!

近年、相続トラブルは増加の一途をたどっています。「我が家は財産が少ないから。争うような財産はないから。相続トラブルは無縁!」と思われる方も多いと思いますが、司法統計によると家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割のうち、75%が遺産額5000万円以下となっており、うち33%は遺産額が1000万円以下でした。

日本では、財産の私有が認められており、自分の財産はどのように処分するかは自由です(私有財産制度)。財産を持つ人が亡くなった場合、この財産の取り扱いを定める法律が何もないと財産が宙に浮いてしまいます。現在は、こういった事態を避ける意味も含めて相続制度が定められています。

2. 相続の対象とは?

では、相続の対象となる財産はどのようなものがあるのでしょうか? 相続の対象となるもの、相続の対象にならないものについて解説していきます。

2-1. 相続の対象となるもの

相続と聞くと、現預金や不動産、美術品といったいわゆる「売買する価値のある資産」「市場価値のある財産」を思い浮かべる方が多いかと思います。しかし、日本の相続制度は「包括承継」です。プラスのものだけでなく、マイナスのものも引き継ぐことになります。
相続の対象となるプラスの財産・マイナスの財産はそれぞれ次のようなものが考えられます。

プラスの財産

  • 動産
    現預金、有価証券、貸付金、売掛金、自動車、家財、骨董品、貴金属など
     
  • 不動産
    宅地、農地、建物、店舗、居宅、借地権、借家権など

マイナスの財産

  • 負債
     
  • 未払税金等
    所得税や住民税、固定資産税や延滞税等の未納分
     
  • 未払費用
    水道光熱費や電話代、医療費、家賃などで被相続人が使用していた期間分のうち未払いのもの

2-2. 相続の対象とならないもの

身分的な権利・義務関係や祭祀関連の財産など、相続の対象とならない財産ももちろんあります。相続の対象とならない財産は次のようなものです。

  • 一身専属的な権利義務
    生活保護受給権、国家資格、親権、扶養義務など
     
  • 香典、弔慰金、葬儀費用
     
  • 生命保険金
    被相続人自身が保険金の受取人になっているものを除く
     
  • 死亡退職金
    受取人指定がなく、被相続人に受取の権利があるものを除く
     
  • 遺族年金
    被相続人自身が保険金の受取人になっているものを除く
     
  • 墓地、墓石、仏壇、祭具、系譜
    祭祀主催者が承継するが遺産分割の対象とはならない

「相続の対象とはならない」ものとは、あくまで「民法上の相続の対象とならない財産」です。

生命保険金や死亡退職金については、民法上の相続の対象とはなりませんが、税法上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。また、生命保険金や死亡退職金のうち一定額や墓地や墓石などは相続税法上非課税財産として取り扱われます。

3. 相続の範囲と相続順位

相続の話を行う場合、「誰が遺産を相続するのか」も非常に重要です。亡くなった被相続人の家族であれば全員相続するというイメージがあるかもしれませんが、相続人の対象は、配偶者や子どもなどの家族だけではありません

相続人は家族以外にも、祖父母・孫・ひ孫、兄弟姉妹、甥姪、いとこ、などなど、ケースバイケースで色々な親族が相続人の対象となる可能性もあり、誰が遺産相続する相続人なのかを確定しないと、相続手続きを行うことができません。

そこで、法定相続人がきちんと定められ、相続順位の高い人から順番に相続をしていくことになるのです。
日本の相続においては「遺言書の有無」が大きく影響しますが、基本的に遺産を相続できるのは法定相続人受遺者になります。

  • 法定相続人
    民法で定められた被相続人の配偶者、子ども、両親、兄弟姉妹など
     
  • 受遺者
    遺言書によって指定された遺産の受取人

では、遺言書がある場合と、法定相続人(遺言書がない、もしくは遺言書による指定のない財産がある)の場合のケース別で解説します。

3-1. 遺言書がある場合

遺言書がある場合には、原則として遺言書の内容が優先されます。

遺言書による遺贈の受取人が指定されている場合には、その受取人(受遺者)が遺産を受け取ることになります。なお、受遺者には、民法で定められた法定相続人だけでなく、それ以外の人を指定することができます(後述する遺留分に注意しましょう)。

3-2. 法定相続人の場合

遺言書による指定のない財産がある場合や遺言書そのものがない場合については、民法に従い、法定相続人が遺産を受け取ることになります。

配偶者(法律上の婚姻関係のある配偶者のみ。事実婚や内縁の妻は含まれません)は、常に法定相続人になります。配偶者以外の親族(血族のみ)は、相続する順位が決まっており、相続順位が高い人が相続人となります。

配偶者は常に相続人になります。どのような家族構成であっても、配偶者(妻や夫)は常に相続人になります。ただし内縁の配偶者は相続人になりません。

配偶者以外の相続人には優先順位があります。

【第1順位】子ども


亡くなった人に子どもがいた場合、配偶者と子どもが相続人になります。子どもが先に死亡して孫が生きている場合には、相続人は孫、孫もすでに死亡してひ孫がいればひ孫などの直系卑属になります。
養子や認知した子ども、前婚の配偶者の子どもも含みます。

【第2順位】親

亡くなった人に子どもがいなかった場合、相続人になるのは配偶者と親です。親が先に死亡していれば祖父母、祖父母も死亡していれば曽祖父母などの直系尊属。養親も含まれます。

【第3順位】兄弟姉妹

子どもがおらず、両親や祖父母も亡くなっていた場合、亡くなった人の配偶者と兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹が先に死亡していれば甥や姪です。

順位の上位者が相続人になれば、下位の人は相続人になれません。たとえば、第1順位の子どもが相続人になる場合、親や兄弟姉妹は相続人にはなれません。また、同じ順位の相続人が複数いる場合、その全員が相続人となります。

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