バイク事故 ー 重症を負うケースが多いバイク事故について、後遺症と慰謝料、過失割合などについて解説

バイク事故 ー 重症を負うケースが多いバイク事故について、後遺症と慰謝料、過失割合などについて解説

高校生から高齢者まで幅広い世代で利用されている自動二輪や原動機付自転車等のバイクは、私たちの日常に深く関わっています。しかしながら、バイク事故は自動車事故とは異なる点も非常に多く、バイク事故に関する正確な知識、バイク事故の特徴をしっかりと把握しておくことが大切です。

1. バイク事故の現状

自動二輪や原動機付自転車等のバイクは、車に比べてコンパクトであり運転もしやすく、免許の取得のための期間も短く、また費用も安いことから、高校生から高齢者まで幅広い世代で利用されています。

バイクの保有台数は、2018年時点で、日本全国で約362万台保有されており、私たちの日常にバイクは深く関わっています。

しかしながら、バイク事故は自動車事故とは異なる点も非常に多く、バイク乗車中に事故に遭遇された方は、バイク事故に関する正確な知識、バイク事故の特徴をしっかりと把握しておくことが大切であり、事故解決のために非常に重要となります。

1-1. バイク事故は死亡率が高い

交通事故による致死率
  • 引用元:平成30年中の交通事故の発生状況/警察庁

上のグラフは、自動車・自動二輪車の交通事故による致死率を比較したものになります。

グラフを見たら分かるように、自動車と比較すると、自動二輪車は34倍ほど死亡するリスクが高く、自動二輪車の致死率が突出しています。

死者数で比較をしても、乗用車の死亡者数は1197人、自動二輪車の死亡者数は401人となっています。死亡者数だけで見ると乗用車の方が多いですが、保有台数を考慮すると、自動二輪車の死亡率は非常に高くなっています。

1-2. 死亡原因

死亡原因となった損傷部位の比較
  • 引用元:平成30年中の交通事故の発生状況/警察庁

上のグラフは、自動車とバイクの死亡事故における死亡原因となった部位の比較を示したものになります。

バイク事故においては、自動車事故と比較して、頭部の損傷が致命傷となるケースが多いことが分かります。

負傷事故における損傷部位の比較
  • 引用元:平成30年中の交通事故の発生状況/警察庁

次のグラフは、負傷事故における損傷部位の比較を示したものになります。

自動車事故の多くは、むち打ちなど頸部の損傷が原因です。対して、バイク事故においては、自動車事故ではほとんど見られない腕や脚の損傷が非常に多いことが分かります。

バイク事故から身を守るためには、ヘルメットの着用が非常に重要です。なお、バイク運転時のヘルメットの着用は、道路交通法で義務づけられています(道路交通法71条の4)。

また、腕や脚の保護のために、手袋やブーツを身につける、夏でも半袖半ズボンは控えるといった服装への注意が必要です。厚手の服を着ているだけでも、損傷の程度を軽減できるといえます。

2. バイク事故の特徴

バイク事故の特徴は以下の通りです。

  • 自動車の死角に入りやすい
  • バランスを取りにくく、転倒しやすい
  • 運転者が前屈みの姿勢になるため、視覚が狭くなりやすい
  • 運転者の身体を保護するものが少なく、重症になりやすい

バイクは、バランスをとって走行する乗り物であるため、一旦バランスを崩すと、ハンドルを取られてしまい、転倒することが多いです。また、ブレーキが前後輪を別々に操作する必要があり、ブレーキの操作も転倒の原因と言えるでしょう。

バイクの運転手からすると、相手の自動車から自分のバイクはしっかりと見えていると思っていることが非常に多く、さらに、バイクの運転手は路面の凸凹への注意等も必要となり、視界が路面中心となってしまうため、これもバイク事故の大きな原因の一つと言えます。

その反面、自動車の運転手からすると、バイクは自動車と比べて車体が小さく、バイクが遠くに見えてしまったり、速度もゆっくりであると捉えられ、夜間は特に見落としがちになってしまいます。この点もまた、バイク事故の大きな原因になっています。

このような特徴から、バイク事故では運転者が重症を負うケースが非常に多いといえます。

バイクを運転中に衝突されると、どんなに速度がゆっくりであったとしても、運転手は固いコンクリート上に投げ出されてしまいます。速度が速ければ速いほど、その衝撃は強くなり、怪我の重症度も高くなるといえるでしょう。

バイク事故では、打ちつけた部位により、様々な重症な被害が予想されます。中でも、走行中に腰部をコンクリートやガードレールにぶつけてしまうことにより、脊椎神経を損傷し、四肢不随になるケースは非常に多い被害と言えます。

3. バイク事故の後遺症

3-1. バイク事故の後遺症

バイク事故による後遺症では、以下のような症状が多く見られます。

① 下半身不随

バイク事故で多い後遺症の1つに、下半身不随があります。下半身不随とは、下半身が麻痺して動かなくなることであり、片足が動かなくなることもあれば、両足が動かなくなることもあります。

バイク事故で下半身不随になる原因として考えられるものは、以下の傷害です。

  • 脊髄損傷
    胸髄以下、特に腰髄を損傷した場合に、下半身不随になりやすい。

  • 外傷性くも膜下出血
    バイク事故で頭に強い衝撃を受けたことで、脳を包むくも膜の内側で出血が起こる。

バイク事故では下半身不随の他にも、胸から下が動かなくなる、手足が動かなくなるといった症状が残ることもあります。

失明

バイク事故では失明が後遺症として残る可能性もあります。バイク事故での失明の原因として考えられるものは、以下の通りです。

  • 網膜剥離・網膜穿孔
    網膜剥離とは、バイク事故によって、眼球の内側にある網膜という膜が剥がれて、視力が低下すること。網膜穿孔とは、バイク事故によって、網膜に穴が開いてしまうこと。

  • 眼窩底骨折
    バイク事故の衝撃で、眼球が位置する「眼窩」と呼ばれる空間の床に当たる「眼窩底」が骨折すること。物が二重に見えたり、血混じりの鼻水がでることがある。

  • 眼球破裂
    バイク事故によって、大きな衝撃が目に加わったり、鋭いものが眼球に刺さることで、眼球を覆う膜(角膜や強膜)の一部が破れた状態になってしまうこと。眩しさを感じやすくなったり、眼球に違和感を感じるといった症状が現れることがある。

  • 頭蓋底骨折
    眼球が位置する「眼窩」と呼ばれる空間の床に当たる「眼窩底」が骨折した状態。頭蓋底の周辺の視神経が損傷し、失明の他、調節機能障害、視野障害、眼球やまぶたの運動障害などの可能性がある。

③ 骨折による後遺症

バイク事故が発生すると、腰や首、手足など様々な部位を骨折する可能性があります。一口に骨折といっても、その種類には様々なものがあります。

バイク事故で発生する可能性のある骨折の種類と、それにより残る後遺症について確認していきましょう。

  • 圧迫骨折
    骨に圧力がかかり、つぶれるようにして骨が折れること。
    【後遺症】椎体の変形、麻痺、痛み、可動域制限

  • 開放骨折
    折れた骨が皮膚を突き破り、傷口が開くこと。
    【後遺症】痺れ、痛み、関節可動域制限、偽関節、変形障害、醜状障害

  • 破裂骨折
    骨折した骨が脊柱管の方向に飛び出し、脊柱管の中を通る脊髄などを圧迫すること。
    【後遺症】椎体の変形、麻痺、痛み、可動域制限

  • 粉砕骨折
    骨だけではなく脂肪や膠原繊維なども損傷し、粉砕したような状態になること。
    【後遺症】運動障害、醜状障害

④ 体の切断

バイク事故によって、足や腕、指の切断を余儀なくされるケースも非常に多いです。切断の原因としては、以下のものがあります。

  • 開放骨折や粉砕骨折等の骨折
    事故以前のように骨を接着することができなかったり、傷口が炎症を起こすことで、切断に至ってしまう。

  • 外傷
    バイク事故の衝撃による外傷により、切断に至ってしまう。

3-2. バイク事故による後遺障害等級

バイク事故で後遺症が残り、後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料を加害者側に請求できます。バイク事故での主な後遺症が該当する可能性のある等級、慰謝料について説明いたします。

以下に記載している慰謝料は、弁護士に依頼した際に提示できる金額である、弁護士基準の慰謝料になります。

弁護士に依頼しなかった場合に、保険会社が提示してくる金額は、弁護士基準よりも明らかに低い金額である事が多いため、慰謝料の交渉は弁護士に依頼することをおすすめいたします。

下半身不随

単麻痺の場合

5 級 2 号 1400万円

  • 高度

7 級 4 号 1000万円

  • 中度

9 級 10 号 690万円

  • 軽度

12 級 13 号 290万円

  • 軽微

対麻痺の場合

1 級 1 号 4000万円

  • 高度(要介護)

2 級 1 号 3000万円

  • 中度(要介護)

3 級 3 号 1990万円

  • 中度

5 級 2 号 1400万円

  • 軽度

12 級 13 号 290万円

  • 軽微

失明

1 級 1 号 2800万円

  • 両目を失明

2 級 1 号 2370万円

  • 1眼を失明し、1眼の視力が0.02以下になった

3 級 1 号 1990万円

  • 1眼を失明し、1眼の視力が0.06以下になった

7 級 1 号 1000万円

  • 1眼を失明し、1眼の視力が0.6以下になった

8 級 1 号 830万円

  • 1眼を失明または視力が0.02以下になった

上肢の可動域制限

肩関節、肘関節、手関節のすべてが強直してしまい、手指の全部の用を廃した

1 級 4 号 2800万円

  • 両上肢の場合

5 級 6 号 1400万円

  • 片側の上肢の場合

人工関節の挿入置換により、関節に1/2以下の可動域制限が生じた

6 級 6 号 1180万円

  • 1上肢の2関節の場合

8 級 6 号 830万円

  • 1上肢の1関節の場合

1上肢の肩・肘・手首のうち、1つに可動域制限が生じた

10 級 10 号 550万円

  • 1/2以下の可動域制限

12 級 6 号 290万円

  • 3/4以下の可動域制限

下肢の可動域制限

人工関節の挿入置換により、関節に1/2以下の可動域制限が生じた

6 級 7 号 1180万円

  • 1下肢の2関節の場合

8 級 7 号 830万円

  • 1下肢の1関節の場合

1下肢の股・膝・足首のうち、1つに可動域制限が生じた

10 級 11 号 550万円

  • 1/2以下の可動域制限

12 級 7 号 290万円

  • 3/4以下の可動域制限

しびれ、痛みの後遺障害

12 級 13 号 290万円

  • しびれや痛みの存在の医学的な証明が可能である

14 級 9 号 110万円

  • しびれや痛みの存在の説明、推定が可能である

変形障害の後遺障害

6 級 5 号 1180万円

  • 脊柱に著しい変形がある

11 級 7 号 420万円

  • 脊柱に変形がある

12 級 5 号 290万円

  • 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨に著しい変形がある

醜状障害の後遺障害

14 級 4 号 110万円

  • 上肢の露出面に、手のひらの大きさの醜い痕が残った

14 級 5 号 110万円

  • 下肢の露出面に、手のひらの大きさの醜い痕が残った

身体の切断をともなう後遺障害

1級 2800万円

  • 両上肢の肘関節以上を切断
  • 両下肢の膝関節以上を切断

2級 2370万円

  • 両上肢の手関節以上を切断
  • 両下肢の足関節以上を切断

3級 1990万円

  • 両手の手指全てを切断

4級 1670万円

  • 1上肢の肘関節以上を切断
  • 1下肢の膝関節以上を切断
  • 両足のリスフラン関節以上を切断

5級 1400万円

  • 1上肢の手関節以上を切断
  • 1下肢の足関節以上を切断
  • 両足の足指全てを切断

6級 1180万円

  • 1手の手指全て又は親指を含む4手指を切断

7級 1000万円

  • 1手の親指含む3手指又は親指以外の4手指を切断
  • 1足のリスフラン関節以上を切断

8級 830万円

  • 1手の親指含む2手指又は親指以外の3手指を切断
  • 1下肢の5㎝以上を切断
  • 1足の足指全てを切断

9級 690万円

  • 1手の親指又は親指以外の2手指を切断
  • 1足の親指を含む2以上の足指を切断

10級 550万円

  • 下肢の3㎝以上を切断
  • 1足の親指又はそれ以外の4足指を切断

11級 420万円

  • 1手の人差し指、中指又は薬指を切断

12級 290万円

  • 1手の小指を切断
  • 1足の第2の足指、それを含む2の足指、第3の足指以下の3足指を切断

13級 180万円

  • 1手の親指の指骨の一部を切断
  • 1下肢の1㎝以上を切断
  • 1足の第3の足指以下の1または2足指を切断

14級 110万円

  • 1手の親指以外の手指の指骨の一部を切断

バイク事故で負う可能性のある後遺症には、様々な種類があります。今回説明した後遺症は、主な症状であるため、他の後遺症が残る可能性ももちろんあります。それぞれの後遺症に対して、詳細に説明を行いますので、後遺症について分からないことがある際は、いつでもご相談ください。

3-3. 後遺障害等級認定と弁護士

バイク事故に遭って後遺症が残った場合、以下の点を覚えておきましょう。

  • 後遺障害等級の認定が妥当かどうか確認をする
  • 保険会社から提示された慰謝料金額が妥当かどうか確認をする
  • 示談交渉、後遺障害等級認定の申請は弁護士に任せる方が良い

バイク事故では重症な後遺症が残りやすい事故の1つになります。よって、保険会社からも高額な慰謝料を提示される場合があり、そのまま鵜呑みにしてしまう方も多いでしょう。しかし、実は、残った後遺症に対する慰謝料としては、適正額よりも低い可能性もあります。

そもそも保険会社は、相場よりも低めの金額を提示してくる傾向にあるため、示談金の提示を受けてもすぐに受け入れず、必ず適正な金額かどうかを弁護士に確認してもらうようにしましょう。

被害者自身が増額を要求しても受け入れてもらえない可能性が高いですが、弁護士が増額を要求することで、主張が受け入れられる可能性は非常に高くなります。よって、バイク事故の後遺症についてお悩みの方は、ぜひ一度、当弁護士法人きさらぎまでご相談ください。初回相談は無料ですので、お気軽にお越しください。

4. バイク事故の過失割合

過失割合とは、交通事故が発生した原因が、加害者と被害者それぞれにどの程度ずつあるかを割合で示したものになります。たとえ被害者であっても、自転車事故をはじめとした交通事故は、一方だけに過失があるケースは少ないです。よって、過失割合がつくことがほとんどであり、受け取れる賠償金はその割合分引かれることになります。

交通事故は、それぞれ複雑であり、状況や原因も様々ですが、ある程度事故を類型ごとに分類して考えることができます。その事故類型に対して、一定の過失割合の「基準」が定められています。

この基準は、これまでにおこなわれた民事裁判例がもととなっています。

4-1. バイク事故の過失割合を決める際のポイント

バイク事故が起こったとき、過失割合を決定するための重要な3つのポイントがあります。

① 事故現場が交差点か否か

まず、事故現場が交差点かそうでないかが、非常に重要なポイントとなります。交差点の場合には、交差点独自の様々な交通ルールが適用になるからです。

この交通ルールとは、例えば、広い方の道路が優先される、左側の車両が優先される、徐行や一旦停止が必要な場合がある、等です。交差点においては、前方だけでなく、左右への高い注意力も要求されることになります。

② 信号機の有無

次に重要なポイントが、信号機の有無です。信号機がなかったら、広い方の道路が優先されたり、左側の車両が優先されたりしますが、信号機があれば、基本的に信号機による指示が第一になります。

信号無視をした場合、非常に高い過失割合が割り当てられることになります。

③ 信号機の色

信号機の色も、非常に重要なポイントになります。例えば、赤信号で進行してしまった場合、過失割合は非常に高くなり、100%に近い過失割合が割り当てられます。

また、黄色信号であっても、原則的には停止をしなければなりません。よって、黄色信号で進行した場合にも、過失割合は高くなることを覚えておきましょう。

万が一バイク事故等交通事故に遭ってしまった際、自身の過失割合をなるべく低くするために、普段から信号機の指示は必ず守るようにしましょう。

④ 単車修正

バイク事故の過失割合について、もう1点知っておく必要があります。バイクと自動車の交通事故の場合、基本的にはバイクの方が自動車よりも、過失割合は小さくなります。

バイクは、自動車よりも車体が小さく事故回避能力が低いと考えられていること、バイクの方が交通事故によって受けるダメージが大きいこと等が考慮されています。このことを、「単車修正」といいます。

4-2. 過失割合の具体例

次に、バイク事故のこれまでの判例をもとに「バイク対自動車」「バイク対歩行者」のパターンに分けて、具体例を用いて説明していきます。

① バイク 対 自動車

この場合、前述しているように、バイクの方が有利に扱われるケースの方が多いです。自動車もバイクも、道路交通法上はどちらも同じ「車両」として扱われますが、バイクのほうが事故の衝撃が運転者にダイレクトに加わる危険性が高いため、バイクの過失割合が有利に扱われるのです。

バイクが青信号で交差点を走行中に、自動車が赤信号で交差点に進入し衝突
→自動車:バイク=100:0

バイクが黄信号で交差点を走行中に、自動車が赤信号で交差点に進入し衝突
→自動車:バイク=100:0

一方の車両が一方通行規制に違反して交差点にさしかかった時に衝突
→自動車(違反あり):バイク(違反なし)=90:10
→自動車(違反なし):バイク(違反あり)=30:70

② バイク 対 歩行者

この場合、歩行者の方が有利に扱われるケースの方が多くなっています。道路交通法上、バイクは「車両」として扱われます。歩行者の方が大きなダメージを受ける危険性が高いため、歩行者の過失割合が有利に扱われるのです。

歩行者が青信号で横断を開始し、バイクが赤信号で進入して衝突
→バイク:歩行者=100:0

歩行者が青信号で横断を開始し、右左折のために青信号で交差点を進入してきたバイクと衝突
→バイク:歩行者=90:10

横断歩道から少し離れた場所で歩行者が道路を横断し、バイクと衝突
→バイク:歩行者=70:30

ここで紹介した過失割合は、様々な基準の中でのほんの一部となります。ご自身の事故にあった適正な過失割合が知りたいという方は、ぜひ一度私ども弁護士にご相談ください。

また、提示された過失割合に納得がいかなくて悩んでいる、といった方も、一度ご相談ください。詳細に話を聞いた上で、必ずご納得いただける提案をさせていただきます。

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